2014/11/13

長崎弁の話 その5。 ~尊敬表現のこと~

今回で5回目になりました、長崎弁の話です。今回は、文法的表現の一つについてピックアップしていきます。

長崎の方言には、相手への「尊敬」を表すために用いられることばがあります。僕自身も、普段の会話だけでなく、仕事でも使うことが多いことばです。 と言うのも、仕事柄、長崎弁の方がコミュニケーションがとりやすい場面があるためです。

さて、尊敬を表すことばにいったいどんなものがあるかというと…

主に、「~なさる」・「~なる」・「~(ら)す」・「~(ら)る」の4つです。

これらの中で、僕自身は「~らす」と「~なる」の2つについては、普段の会話で耳にするだけでなくよく使います。特に使うことが多いのは、「~らす」です。

ではどう使うのかというと…、例を2つ紹介します。


1.

A:「先輩はいつ頃らすと?」 (先輩はいつ頃来られるの?)

B:「たしか、12時頃ばい。」 (たしか、12時ごろだよ。)


「こらす」と聞いて、もしかしたら「凝らす」という言葉が頭に浮かぶかもしれませんが、間違えないように気を付けてくださいね。ここでの「こらす」は、「来る」の尊敬を表す言葉と覚えていただけたらと思います。

長崎を観光された際に、地元の方から「どこからこらした(きなさった)とね?」(どこから来られたの?)などと訊かれることもあるかもしれませんが、そのときは上のやり取りを思い出してもらえたら会話がしやすくなるかと思います。

2.

A:「あの人は何ば飲みよんなると?」 (あの人は何を飲んでいらっしゃるの?)

B:「紅茶ば飲みよらすとよ。」 (紅茶を飲んでいらっしゃるよ。)


「~なる」も「~らす」も本当に耳にする場面が多いんです。それだけに、色々な言葉と組み合わさると「?」マークが浮かぶかもしれませんね。

先ほど、尊敬を表すことばは4つあるということを話しましたが、実は、それぞれ敬意の高さが異なります。

敬意の高い方から、「~なさる」>「~なる」>「~(ら)す」・「~(ら)る」という順番になります。同じ尊敬表現といえど、それぞれ敬意の高さに違いがあることには驚きました。

ということで、今回は長崎弁の尊敬表現について簡単に話をしました。まだまだ長崎弁については色々書いていきますが、長崎を訪れる際に、このブログで触れた長崎弁の話を少しでも役立ててもらえたら嬉しく思います。


・参考文献…坂口至(1998):日本のことばシリーズ 42 長崎県のことば(明治書院) p18-19.

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